
約100年の映画館がナイトクラブへ。札幌「SYNC north」が示す新たなカルチャースポットの形
映画を観る場所から、音楽を全身で浴びる場所へ。札幌・狸小路で長年親しまれてきた映画館「サツゲキ」の跡地が、LIVE HOUSE / NIGHT CLUB「SYNC north(シンク ノース)」として生まれ変わった。

単に映画館を取り壊して新しいクラブを作ったわけではない。かつてのシアター構造や映画館の座席、壁に残された著名人のサインなど、その場所が歩んできた歴史を残しながら、最新の音響・照明・映像設備を組み込んだ新たなエンターテインメント空間へとアップデートされている。
約100年続いた“映画の場所”を受け継ぐ
「SYNC north」が誕生したのは、札幌・狸小路5丁目。この場所では1925年に映画館「三友館」が開業。その後「東宝プラザ」などを経て、近年はミニシアター「サツゲキ」として営業してきた。

前身を含めれば、およそ100年にわたって札幌の映画文化を支えてきた場所である。サツゲキは2026年3月29日に閉館し、その空間を引き継ぐ形で「SYNC north」のプロジェクトがスタートした。
興味深いのは、映画館だった過去を消していないことだ。
かつて最大の上映室だった「シアター1」は、その約10メートルの天井高を生かして巨大なメインフロアへと変化。映画を映していたスクリーンに代わり、ステージには約600インチの大型LEDビジョンが設置された。さらに、かつての映写室では壁を取り払った際に現れた鉄骨をあえて残し、その無骨な構造を生かして音響・照明のコントロールスペースへと転用している。

映画館のイスやサインもそのまま残す
リニューアル後も、館内の至るところに“映画館だった頃”の痕跡を見ることができる。一部エリアでは実際に映画館で使われていた座席をそのまま採用。サツゲキを訪れた俳優や映画関係者らが残した壁のサインも消さずに保存されている。

新しい施設を作るために過去をリセットするのではなく、その場所に蓄積されたカルチャーそのものを新しい空間へ引き継ぐ。「SYNC north」の面白さは、この発想にある。
実際、プレオープンを訪れたサツゲキ時代からの来場者からも、かつて映画を観ていた場所が大きく姿を変えながら、映画館の造りが残されていることへの驚きの声が上がっている。
昼はライブハウス、夜はナイトクラブへ
施設全体の総床面積は約1,500平方メートル。昼間はライブハウス、夜になると複数フロアとBARラウンジを備えるナイトクラブとして稼働する。

運営側が掲げるのは「シネコン型」のエンターテインメント施設という考え方だ。映画館で複数の上映作品から観たい映画を選ぶように、来場者が館内を回遊しながら、その日の気分に合わせて異なる音楽や空間を楽しむ。
「閉館」の先に、新しいナイトカルチャーが生まれる
映画館、ライブハウス、ナイトクラブ。一見異なる施設だが、「音や映像を多くの人と共有する」という点では共通している。
SYNC northは、映画館の高い天井やシアター構造を生かし、DJやライブ、映像演出の空間へと再構築した。単なる改装ではなく、映画館としての記憶を残したまま、新たなカルチャーへつないでいる点が大きな特徴だ。
かつてスクリーンを見つめていた場所で、今度は人々が音楽に合わせて踊る。約100年続いた映画の歴史は、新たなナイトカルチャーの舞台として次の時代へ引き継がれていく。





























