
BeatMagジャンル解説シリーズ:TECHNO 編
TECHNOは、1980年代に誕生して以降、人気を高め、今ではハード系からメロディックまで幅広く進化し、世界中のクラブで定番ジャンルとして愛されている。ここでは、そんなTECHNOの基本や歴史、人気のサブジャンル、そして今のトレンドをわかりやすく紹介していく。
TECHNOとはどんな音楽か?
TECHNOは基本4つ打ち、BPMはおおむね128〜140 (160なども存在)。重いキックと“音の質感変化”でフロアをじわじわ高揚させる音楽だ。核になるのは重いキックと16分ハイハット、そこにフィルター/ディレイ/リバーブで質感を揺らし、反復の快感を増幅させる。現行シーンは大箱向けのPeak-Time/Drivingと、没入重視のRaw/Deep/Hypnoticに大別でき、チャートや配信でもこの区分が定着してきた。
簡単な歴史
- 1980年~:デトロイトで誕生(Juan Atkins / Derrick May / Kevin Saunderson)。
- 1990年~:ベルリン(Tresor)を中心に欧州へ拡散、硬質化。
- 2000年~:Minimal と Schranz/Industrial へ二極化。
- 2010年~:フェス風のPeak-Time technoが台頭、メロディック隣接も伸長。
- 2020年~:ハード/ハードレイブ、ハードグルーヴ再燃、トランシー回帰が波。
サブジャンル一覧
TECHNOと言っても種類は様々。以下にそれぞれのジャンルと代表的な一曲と有名アーティストを紹介。
- Detroit Techno:Rhythim Is Rhythim – Strings of Life (1987)
代表的アーティスト:Jeff Mills(アメリカ)/Robert Hood(アメリカ)
- Minimal Techno:ANNA – I See Miracles Everywhere(2023)
代表的アーティスト:Richie Hawtin(カナダ)/ANNA(ブラジル)
- Acid Techno:Charlotte de Witte – High Street(2023)
代表的アーティスト:Charlotte de Witte(ベルギー)/Regal(スペイン)
- Peak-Time / Driving:Adam Beyer & Bart Skils – Your Mind (2018)
代表的アーティスト:Adam Beyer(スウェーデン)/Amelie Lens(ベルギー)
- Hard Techno / Industrial:I Hate Models – Daydream
代表的アーティスト:999999999(イタリア)/I Hate Models(フランス)
- Hypnotic / Deep:Voices From The Lake – Velo di Maya (2021 Remaster)
代表的アーティスト:Wata Igarashi(日本)/Luigi Tozzi(イタリア)
- Hardgroove(復古):Ben Sims – In the City(2021)
代表的アーティスト:Ben Sims(イギリス)/Nastia(ウクライナ)
- Trancey Techno / Rave Techno:Kobosil – Derange (2022)
代表的アーティスト:Kobosil(ドイツ)/Alignment(イタリア)
- Psy-Techno(テクノ×サイ):Indira Paganotto – Jungle(2022)
代表的アーティスト:Indira Paganotto(スペイン)/Omnya(イスラエル)
- Melodic Techno:Anyma – Eternity (2023)
代表的アーティスト:Anyma(イタリア)/Tale of Us(イタリア)
世界のTECHNOが日本へ:来日ラッシュの現在地
ここ数年、テクノシーンは日本でも再び熱を帯びている。特に2023〜2025年にかけては、Adam Beyer、Amelie Lens、Charlotte de Witte、I Hate Models、VENDEXといった世界トップDJたちが次々と来日を果たした。
東京ではWOMB、VENT、ZEROTOKYO、王城ビルなどが彼らのプレイグラウンドとなり、ソールドアウト公演が続出。また、GMO SONIC、ULTRA Japan、World DJ Festival Japanといった大型フェスやイベントにもテクノ勢が多数登場し、フロアの熱狂を巻き起こした。
中でも特に2024年以降は、ハード寄り・トランシー寄りのテクノを中心に若い層の動員が急増。アンダーグラウンド感が特徴の新宿・王城ビルの人気拡大や、インスタやTikTokでも「#hardtechno」「#amamelens」などのタグが国内トレンド入りするなど、SNS発の再ブームも後押ししている。
こうした流れは、単なる一過性ではなく、日本のナイトカルチャーがグローバルと再接続しているサインでもある。BeatMagでは最新の来日情報を更新しているのでぜひサイト、公式LINE共にチェックしてほしい。
公式LINEは▶︎こちら◀︎
今“流行ってる”テクノ
近年のTECHNOシーンを牽引している潮流には、ハード性・没入感・ジャンルの融合性がキーワードとして見えてくる。それぞれの編集部おすすめの一曲を見ながら、“今を聴く”視点を提供しよう。
トレンド①:ハード寄り / ハードレイブ路線の台頭
代表曲例:Alt8 & Sara Landry – Heaven(Original Mix) — ハードテクノらしいダークな推進力を備えた一曲。
キックのアタックをよりアグレッシブに、ノイズやパーカッションを重層的に重ねて“攻撃力”強化。高速BPM(150前後を超えるケースもあり)との組み合わせで、緊張とスピード感も強調。近年では日本でもHard Technoのイベントが増えたり、それに合わせたイベントスペースもできるほど人気を高めており、今の日本のみならず世界のTechno市場のトレンドとも言えるだろう。
トレンド②:Psy 要素導入/Psy-Techno の勃興
代表曲例:Indira Paganotto – Jungle(2022) — Psy要素とテクノ感の融合が象徴的な一曲。
Psy-Technoは、サイケっぽい浮遊感とテクノのドライブ感を掛け合わせた新世代サウンド。うねるシンセと重いキックが絡み合い、聴くというより“ハマる”感覚に近い。リバーブで広がる空間や、トランス的な展開が特徴で、Indira Paganottoを筆頭に世界中のフェスで人気が急上昇中。トランスでもハードテクノでもない、“今っぽい中間地帯”としてクラブシーンを熱くしている。
トレンド③:Peak-Time / Driving 定番化の深化
代表曲例:Eli Brown / Layton Giordani / OFFAIAH – When I Push
今のPeak-Time / Driving Technoは、勢いとキレのバランスが完璧。Eli BrownやLayton Giordaniの最新曲も、ドロップ直前に“静寂”を挟む演出で爆発力を高めている。わずかにBPMを上げる“揺らぎ”のミックスもトレンドで、フロアを止めずに一気に引き上げるのが今のテクノだ。
まとめ
TECHNOは、派手なメロディよりもリズムと質感でフロアを支配する音楽だ。デトロイトの反復ビートから始まり、いまやハード・メロディック・サイケまで多様に進化し、世界中のクラブで鳴り響いている。日本でもZEROTOKYOや王城ビルを中心に来日ラッシュが続き、若い層の熱が確実に戻ってきた。時代が変わっても、テクノが持つ「ただビートに身を委ねる快感」は変わらない。